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【ネタバレ注意】週刊少年ジャンプを中心に、ふれた作品の感想をたくわえるブログ。

星の王子さま

(訳)倉橋由美子、2005、宝島社
〈原作:"Le Petit Prince"、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ、1943年〉
一部の界隈で一般教養のように扱われている気がする。

読み始めてまず、主人公が大人であることに驚いた。 タイトルから童話のようなものをイメージしていたから、当然主人公も子供だろうと思っていた。

そして始まりの話も普通に興味深い。 本当は大蛇やジャングルや星の話をしたいのに、一般的な大人の「レベルに合わせて」政治やネクタイの話をする。 全然子供向けの書き出しじゃない。

小説で「これは(中略)その小さな人物の肖像だ」のように挿絵に言及する文、挿し絵が無いと成り立たない文は新鮮だった。そこは児童書っぽくもある。

ビジネスマンを嘲るために先に大酒飲みを出していたのが面白かった。 「星」は何かの比喩なんだろうか。

「肝心なことは目には見えない」がよく引用される文だったかな? 「目に見えないから肝心なのだ」という論法に利用されやすそう。要注意。
時間をかけたものが大切になるという考えには賛成。

不特定の一つが特別になれば全てが特別に見えるようになるというのは素敵な考え方なのかもしれない。 あえて真実から一歩引くことでロマンを生み出し、それを生きる糧とする。

訳者あとがきによると、自分が思っていた以上に世界的に有名な作品らしい。
訳者の方がまさに、自分が読みながら感じたことを書いていた。これは子供向きの話ではない。

結局、この本が一般教養になり得るかというとやはり無理があるように思う(少なくとも日本では)。 細かいエピソードがたくさんある話だし、国語の教科書に載るくらいの長さでもないから。 古典的名作であることには同意する。

作者の名前「サン=テグジュペリ」はフランス語の綴りだと「Saint-Exupéry」となっている。 区切りが「-」から「=」に変わっているのも、tが後ろに移っているのも気になる。なんでだろう。