感想SPACE

【ネタバレ注意】週刊少年ジャンプを中心に、ふれた作品の感想をたくわえるブログ。

伝説シリーズ・世界編/宇宙編

西尾維新、2015-2018年、講談社
人に薦めたいけれど薦め方が難しいシリーズ。まず本が分厚い。 そして挿し絵が一切無いので、キャラクターのビジュアルを見せることもできない。 装丁とか格好いいんですけどねえ。

痛から録まで→伝説シリーズ・四国ゲーム編 - 感想SPACE

『悲亡伝』

2015年
空挺部隊って『混物語』でも出てきたワードだ。「空々空の命令しかきかない」ww厄介どころではない。 元魔法少女たちは部隊の中で何をするんだろう。『空挺部隊』が名前先行ってことは、別に空を飛びまわったりはしないのか。 2人ずつに分かれて全員無事でいられる気がしない。怖い。
手袋の中で、コスプレが氷上案件だと思われてるのは草。 死んでもいい新キャラはひどい。 『悲恋』の部品に人間の部分が使われているとか書いてある。 氷上が四国編からもう一段階やべーやつになってる。
空々の観光客スタイル笑う。何の意図があってやってるんだ。 地濃のご当地ファッションもビジュアルで見たくなってきた。 クールビューティー魔法少女再び(笑)あったなー、そういえば。余った黒衣が1つだけ。 『魔女』の『先見性』が言語依存というのはけっこう厳しい制約ですね。 左博士まで観光客スタイル(パチモン)。

空挺部隊のレーダーチャート。 運とかいう地濃鑿のためにあるパラメータ。 「天才」たちの知力は意外と普通だ。空々を少し上回る程度。 こうして見ると氷上がめちゃくちゃ優秀だと分かる。武力を除けば魔法少女を完封している。
内面描写に括弧がつくようになったのは前巻で言ってたような視点の関係かな? でも括弧がない部分もあるから線引きはよく分からない。

『悲衛伝』

2016年
世界編とか言いながらもう太陽系まで舞台が広がっている。 いきなり月人。そうか、冥王星を聞いたこともない子供はいるか。 「リングイーネ」って存在するんだ、パスタの種類で。純粋なダジャレかと思ったわ。
今まで空々とほとんど関わりなかった灯籠木との絡みが見れて良い。しかも関係性が深い。 灯籠木は太刀洗斬子(めだかボックス)のようなイメージに固まってきた。
「生命が存在したからといって星にメリットがあるわけではないし、生命が存在しないことですっきりする」という視点は新鮮。 『空々星』と『灯籠木星』は草。「天体になる」ってなんだよ。 太陽の話し方も新鮮。文字の倒置と漢字の誤字があるのになぜか読める。 こういう遊び方もあるのかと感心した。読めるけどギリギリ読むのに苦労するライン。 『風使い』がプラズマやオーロラまでコントロールできるとなるとチート度合いが変わってくるぞ。
死亡フラグみたいなの多くない?じわじわ溜められてる気がしてヒヤヒヤする。 おー、引きが強い。まさに屍の山。地球の属性「悲」には何か意味があるのか。 「おやおや、太陽系まで話を広げてしまったらその後の地球が小さく見えませんかねー」と地濃のように意地悪く考えていたら、紛うことなきラスボスだった。 存在感の強い人間王を差し置いて宇宙でもう地球と対面してしまうという展開にはテクニカルさを感じる。
地濃鑿の番外編は見たいです(笑)

まさか各天体と渡り合うのに自室だけで済むとは。 ずっと交渉をしているだけあって、「あそこをつつけば…」とか「突破口」とかそんな話が多かった。
天体の情報は普通にためになる。 木星土星はでかいわりに自転が速いとか逆に水星と金星はめちゃくちゃ遅いとか。火星の自転周期は地球とほぼ同じ。 木星土星は衛星が多過ぎて、どんな風にそれらの周りを公転してるのか想像できない。
金星の関西弁もそうだし好藤やかんづめの訛りも、あまり違和感がない。 作者の方言の扱いが上手いのか、自分のセンサーが鈍いのか。
酸ヶ湯博士の胡散臭さというか得体の知れなさは消えないなあ。右左危博士は四国編でかなり薄れた。 酸ヶ湯はミスをする場面が無いからかな。

『悲球伝』

2018年
トレースした花屋のものとはいえ、『悲恋』の心情描写をするのはアリなのか。 手袋は物語的にもう脱落してしまうかと思ってたので、役割が与えられて良かった。 中学生が1人でアフリカへ行くのは普通にすごい。 牡蠣垣閂って死んでなかったっけ!?あれ、明確な描写は無かったか? 手袋や鋼矢が宇宙の事情を推測で言い当てるのは行き過ぎな気がしないでもない。「惑星と交渉」を発想するのは無理だろう。
チーム『オータム』を回想した直後に「みんな死んだが」と続けるのひどい。 手袋はいつその幸運が途切れるか分からなくて怖い。先行きが不安。 対人コミュニケーションも良い方に転ばない地濃のようで、敵を作るだけになってる。
8巻の表紙は宇宙から見た太陽系、9巻の表紙は宇宙から見た地球になっていて面白いなーと思っていたが、ここで「地球の写真」が作中に出てくるのはぞくりとする。
もはや1話の中で場面が3つ切り替わるくらい複雑。 人間王!!引っ張るだけの正体が隠されていた。 カルツォネはまだ一悶着ありそう。 手袋はいよいよ無理じゃない?同行者も「死んでいい」2人だし。
予告!?『不死』の魔法が『悲鳴』特攻すぎる。 好藤の方言が薄れてきてるのは少し感じてた。

余談ですが、ちょうどオリンピックの時期だったので、開会式を見て『人間王国』や『リーダーシップ』の多国籍性はこんな感じなのかな〜と思いました。

『悲終伝』

2018年
開幕で終戦チャンス。最初でクライマックス。らしくない英雄。
空々の地濃評がどんどん酷くなってる。 チーム『ウインター』生存説にマジか!?と思ったけど、コスチュームやマルチステッキは回収済みじゃなかったっけ。 そこはすぐに好藤が言ってくれた。唯一登場すらしなかった魔法少女たちが、『人間王国』に繋がった。 そういえば『魔人』の話はどうなった?
地濃は高身長かつ見てて怖いくらいの細さだったのか。 はぁ〜〜?地濃、何大嘘ついとんじゃい。いや、適当なことはよく言ってるけれども。君は利己心の塊だっただろう。無邪気はどうした。
魔法少女名やマルチステッキ名と話のリンクはどこまで考えていたんだろう。 『サンデーモーニングクオーターバック』はともかく、『ジャイアンインパクト』は重要な位置にある。 『ジャイアンインパクト』火星説はおもろい。あくまでこの物語の流れとして。 ずこー。そら月が近付いたら影響は甚大よ。具体的な距離までは知らなかったけど、引力だって近づくほど強くなるだろうし。 その辺は空々にも対応策があるのかと思ってた。
魔法はメンタルが大事だからといって、操作対象まで気の持ちようで拡大できるのは「そんな無茶な」って感じだ。 『水』使いが水素イオンまで操れるのはやり過ぎでは。 ちょくちょく「国際」と書いてあるところが「誉田」の間違いなんじゃないかと思うのだけど、勘違いだろうか。
長いこと『悲鳴伝』は空々の自己紹介かつ英雄誕生の物語だと思っていたけれど、意外とほぼ全ての要素が後々に影響している。 剣藤、花屋、左在存、飢皿木先生、『火達磨』、牡蠣垣。 四国ゲーム編も、その長さは脇に置いても今となっては必要な話しかしていない。 英雄の仕事がシリーズ後半、交渉ばかりになるなんて思ってなかった。
剣藤の「地球を救うから英雄なんじゃなくて、人類を救うから英雄なんでしょ?」は良い言葉だ。 灯籠木の境遇がシリアス…… 『性別不明の幼児』の正体が自分というのは、物語シリーズにおける「君の正体は僕だ」に通ずる驚きがある。 剣藤に悲鳴が聞こえなかった理由がここに来て明かされた。そりゃあ英雄の素質なんて無いですわ……

100年後!?「その後」どころじゃない。鋼矢が天寿をまっとうしたと聞いても複雑。手袋も既に。 地濃と2人きりで生きてる。彼女は最後まで変わらんな。天才ズとは別れたのか。 氷上は「うちの婆さん」になったのかい。よかったね。地濃イマジナリー説は悲しいからやめて。 もし身寄りのないのが本当だとすると、「38人のひ孫」の件も空想になっちゃう。そんな両極端はつらい。 それでも空々とつながりがあったことは幸い。

物語の「その後」にはいろんな形があるけれど、一番受け取るのが難しい終わり方だった。 空々が人類を救った余韻に浸ろうとしたらシャットアウトされた感じ。 少年少女が大人になった姿は見たかったが、死まで知らされたいかと問われると悩む。 本編で誰も死ななくてホッとしたとはいえ、空々が彼女らと2度と会うことのない、会えない状況を悲しいと思ってしまう。 「終わってしまった」と思ってしまう。 彼の老境の感情を理解できるのはまだまだずっと先なのだろう。 (そして理解できるその時にはもうこの本を忘れてしまっているのだろう、とあとがきに思わされます。)
魔法少女の寿命と運命力は関係があるのだろうか? それぞれ生存能力は高かったけれど、『リビングデッド2』を使いまくってた地濃が一番早く死ぬのは致し方ないという気もする。 『パンプキン』も相当魔法を使っていたはずだけれど。 「寿命を削るリスクって物語には関係ないじゃん」となりがちだから、それに対していつ死ぬかをちゃんと示したとも考えられる。 それにしても空々は長生きだな!

300万文字……スケールが違いすぎて想像が追いつかない。

全体

ラスト2巻は若干尺が足りない感じはした。10巻で地球組の描写をもう少し見たかった。 太陽系がみんな女性だったのは何で?とか生き返った牡蠣垣の目的は?とか9巻の手袋はあそこからどうやって助かった?とか疑問は残る。 あとは、空々の『魔人』作りや科学と魔法の共同研究はどこかで本筋に絡むと思っていたので、それが特に無かったのは物足りなかった。 とはいえ、『悲終伝』というタイトルが綺麗すぎるので色々仕方ない部分もある。

悲鳴伝』や『悲痛伝』の表紙を見たときに絵柄の意味は特に分からなかったので、3巻以降も色と文字くらいしか気にしてなかった。 しかし、今改めて見返すと、3巻は吉野川で4巻は龍河洞、5巻は『スパート』と氷上の火炎、6巻は『木』使いと分かりやすく内容と対応していた。 2巻はふりふりのレース?1巻は『寸刻み』……?

四国編までを3クールのアニメで見たい。 1冊が短い美少年シリーズでも1クールで半分だったから、四国編までを2クールに収めるのは無理だろう。 『悲亡伝』からは次々と場面が変わるので、単純に映像化が難しそう。 『悲鳴伝』単体で終わるのも悪くないけど、「この先どうやって地球を倒すことになるんだろう」という疑問は残ると思う。 魔法や人造人間まで登場してようやく対抗手段が想像しやすくなる。まあ、その後それで倒すのかと言うとそうではないが、はったりとして大事。
そもそも『クビキリサイクル』でさえ8話。アニメ化するとしても戯言シリーズより優先されるかは怪しい。 『クビシメロマンチスト』を先にやれって言われそう。
最後までやるなら、最終回EDで戦争終結後が少し描かれてCパートで100年後をやってるところは見えるんですがねえ。 『悲録伝』終わりでも、ハッピーエンド感があって気持ちよく終われそうですよ。

以下は好きなエピグラフ3つ。 各話タイトルも、中身を読んで初めて意味が分かったりギャップに気付けたりして面白い。
「人間が考える葦なら、まず葦が何かを考えよ。」(悲亡伝、第13話)
「言っていることは正しいが、それを言ったことは正しくない。」(悲衛伝、第4話)
「最強の矛と最強の盾を売っている商人を論破するのは、あまりに恐れ知らずである。」(悲終伝、第2話)