感想SPACE

【ネタバレ注意】週刊少年ジャンプを中心に、ふれた作品の感想をたくわえるブログ。

死物語(上・下)

西尾維新、2021年、講談社
モンスターシーズン最終の上下巻。これにて終幕。
それと『掟上今日子の鑑札票』(2021年)も読みました。あちらのシリーズはまだまだ続きそうですね。

前巻: 扇物語 - 感想SPACE

しのぶスーサイド

………サブタイトルが変わってる!!!「ですとぴあデスティニー」は?「ですとぴあデスティネーション」は? (これまでを確認してみると、『余物語』も予告の「よつぎボディ」から「よつぎバディ」に変わってた。)

大学2年になった阿良々木暦。ええー、パンデミック起きてるぅ〜。サブタイトル及び構成が変わったのも、これに影響を受けたからだろうか。現実と同じ時期にパンデミックが始まったと想定するとして、作中はパンデミック1年目ということでOK?
一人暮らしを始めた理由は老倉を心配してたからだったのか。老倉は病みやすそう。ストーカーが消えて健康になってるのは草。 確かにパンデミックによって羽川に危険が及んでいる可能性が跳ね上がってしまったな。阿良々木はほとんど誰の事情も知らない。羽川も忍野も斧乃木ちゃんも扇ちゃんも臥煙さんも撫子も。しっかり孤立してる。
元吸血鬼もどきが元吸血鬼に感染症を説明してるの笑う。いや、忍が意外と専門家だった。 影縫さんとズーム会議する図はシュール(笑)ルーマニアはよく知らない国だなー。ドラキュラ城のモデルはルーマニアにあるのか。
えっ、下巻は上巻の続きじゃないの。てっきり2冊かけての大団円かと思っていた。そうなの?撫子編の方が人気なの?

新型コロナを経験した今だからこそのパンデミックのリアリティ。 スーサイドマスターはイラストだと6歳児には見えない。この作品で言う「少女」くらいには見える。死んだ目をしているからだろうか。息も絶え絶えなのが痛ましい。
まさかここに来て二つ星吸血鬼なんてカテゴリーがあるとは思わなかったよ(笑)色んな吸血鬼の通り名を知りたくなる。 推論を披露する阿良々木は賢そうで大学生っぽい。なるほど~、ロックダウンのせいで吸血鬼にしか蔓延しなかった。 それならパンデミックを描いたのも頷ける。
寝言で呼んだのはトロピカレスク。マスターと眷属の機微を理解するのはなかなか難しい。

卒業式!飛んだな。コロナ禍は分からないが、リモートは継続中。 『結物語』では当然パンデミックの素振りもなかったけど、コロナ禍から3年後ともなれば、日常風景をわざわざ描写しなくていい程度には元に戻っているとも解釈できる。 なんか老倉と仲良くなってる上に、撫子とも仲直りしてる!?羽川と同棲!?……妄想ですよね。 もしもこの巻が時系列的に最後なら「そういうこと」だと信じて希望を持てるけど、もうツバサ・ハネカワが描かれちゃってるんですよ!
えぇ……デスがごくごく普通に死んじゃった。そりゃあ「寿命」が設定されたことは意識せざるを得なかったけど、こんなに早いとは思わなかった。死因がコロナだというのもやりきれない気持ちになる。

「ですとぴあ〜」の3話がまとめられたのか。「ですとぴあデスエデュケーション」まで。それじゃあ、当初の予定だと下巻の内容は無かったのだろうか。 予告にあった「ですとぴあ~」3話の語呂合わせ先行感が好きだったので、サブタイトルが変わったのは残念と言えば残念だけど、むしろ本来の命名則に従っているので文句は言えない。 終盤に「デスエデュケーション」の名残は感じられた。

阿良々木編を最後に持ってきた方が何となく締まりそうな感じがするけど、最後も阿良々木暦千石撫子の流れなのはいつもの順番を優先したのかな?

なでこアラウンド

まさか最後のイラストが洗人迂路子とは。ビジュアル化されるとすら期待してなかった。もっと蛇に寄った相貌をしてるのかと思っていたけど、普通に可愛らしい女の子。蛇目とか半身蛇とかを想像していた。とても危険人物には見えない。

なるほど、「被害者であり加害者でもある」ことがキャラの複雑性になるのか。言われてみれば、戦場ヶ原も八九寺も神原も羽川も『化物語』で既に加害者だった。撫子のメタ発言がすごい。ほぼ作者。 月火ちゃんが語り部を務めるのは無理だなぁ。

今更だがどういうスリーマンセルだ。時系列は上巻より前のはずなのにダブルヘッダーとか言ってやがる。 とりあえずまだ撫子が中学に在籍している時期。水牛で向かう島なんて場所が日本にあるのか。由布島、行ってみたい。 貝木のオンラインサロンは草。金巻き上げてそ〜。 現実の情報を挟んでくるなー。ウポポイは2020年7月に開館したらしい。 イリオモテヤマネコってそんなに強者だったんだ。 上巻との調整が多くて笑う
洗人迂路子、15歳。マジで実の人間の娘なの?臥煙姉妹の歳の差は分からないけれど、姉に18歳の娘がいるのだから、妹に15歳の娘がいても驚くようなことではない…のか? というか令和を採用するのなら、千石と洗人が生まれたのは『化物語』刊行当時ってことになる(笑)

「私のスマホは今頃海の底で深海魚に文明を与えています」という一文がなんか好き。 未だにすっぱだか…!アニメ化厳しい案件。
そうだw撫子は「石」の能力者なんかじゃなかったww 名前とのハマり具合から収まるべきところに収まった感じがして、すっかり騙されてたぜ。
「皐夔稷契(こうきしょくせつ)」って何⁈ここまで難しい熟語は久々に見た。各文字、各パーツに何の馴染みもなくて意味の推測すらできない。しかもググっても中国語のサイトばかり出てくる。『十八史略』の現代語訳サイトによると、皐・夔・稷・契で4人の名臣の名前らしい。
斧乃木ちゃんがある意味別人に。スワンプマンですよねこれ。貝木死んだのか〜、本当に~? 上巻で吹かした発言が縛りになってて草。 影縫さん、博士号まで取ってたの!?インテリ暴力陰陽師。呪いで周りが中退した中でそれはえぐい。 そして不死身憎しは妹の仇だったのね。

ラスボスがめちゃめちゃ解説してくれた。リゾートホテルの一室で。
話を聞いていると、呪い無しの臥煙さんとならいい勝負しそうに思えるくらいには神原のスペックが高い。 18歳の時点でどちらがより臥煙遠江に近いかと考えると、神原は臥煙さんに勝るんじゃないか。 一番のラスボスは既に故人。そうか、迂路子は神原の従姉妹に当たるのか。 何で扇くんが他の誰かではなく神原に付き纏うのかは疑問だったけれど、大元の成分が臥煙遠江だからね。納得。 遠江さんがレイニー・デヴィルを生み出したのが高校生のときだから、それを追って臥煙さんが娘を生んだら若年出産にもなる。神原の出産も影響しているとなれば尚更。
阿良々木が扇ちゃんを助けたことが、知らず知らずのうちに臥煙さんに一矢報いてたのはいいなぁ。ずっと状況を操られているようだったから。なんだか感慨深い。その事実を知れるのが『終物語』の11冊後ってどういうこっちゃ。

後日談で3年後。上巻の後年談もあれは3年後なんだっけ。ガチ上京。18歳でぎりぎりの年齢なんだ、漫画家って。大変。 貝木の生死はマジで謎。 暦をロリコン呼ばわりできるのは、もう完全に成長したなーという感じがする。
小説なら「文字こそが人類の起源」説にも落ち着きそうだけど、さらに遡って「絵」。文字だって絵の一種。撫子が務めるに相応しい、きれいな話だった。

おまけ

そういえば、「洗人」の名前の由来は特に明かされなかった。特殊な読みをするものだから何か意味があるのかと思っていたけれど。蛇つながりという訳でもなさそうだし……
もう一つそういえばで言うと、日傘ちゃんが出て来なかった!あのシーズンレギュラーが!

レイニー・デヴィルも忍野扇も洗人迂路子も、元を辿れば臥煙遠江が関わっていることが判明したけれど、すると遠江さんと関わらないところで猫と虎を生み出した羽川翼はヤバすぎない? 扇ちゃんがキスショットと臥煙遠江とくらやみの三重を経ているのに対して、猫と虎はせいぜいキスショットの影響くらいでは?

某忘却探偵とツバサ・ハネカワは、並行世界の同一人物くらい(ならあり得る)かなーと思ってます。 パラレル同士の状況が極限まで似通った範疇というか。まったくの同一人物だと考えても無理はないけど無理があるというか。そういう印象です。

時代設定まで現実に合わせてきたので、やっぱり終わってしまうのかなと思います。 時代を明確にした理由としてパンデミックが現実に起きたのも大きいだろうけど、最終的に踏み切れたのはこれで最後だからではないか。
残る謎は専門家連中のバックボーンくらいかと思っていたが、それも撫子パートでだいぶ明かされた。 忍野メメがご無沙汰なので、どこかで登場してほしいです。
そしてハネカワにも何らかの決着をつけてほしい。少なくとも伝聞情報だけでは納得できない。同世代の誰かと話をしてくれ。 なぜ世界平和を目指すに至ったのか。博愛が行き着けばあり得るだろうけど、今の時点だと一足飛びに思えてしっくりこない。

続きがあるとすれば、不定期のオフシーズン2が一番現実的かな~。今こそネクストシーズン『接物語』をやるのもありです。
"See you later, alligator."