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【ネタバレ注意】週刊少年ジャンプを中心に、ふれた作品の感想をたくわえるブログ。

言の葉の庭

新海誠加納新太、2017年、KADOKAWA
この本とは別に、新海監督が書き下ろしている小説版もあります。そちらのタイトルは『小説 言の葉の庭』。 新海版は群像劇、この加納版は秋月孝雄視点になっています。

導入は、孝雄が初めて新宿御苑を訪れる頃のこと。 だいぶ靴磨きジャンキーで笑う。 靴に関しては、もっと静かに愛でているのかと思ってた。 初めて新宿御苑に向かうまでも、イメージより孝雄がトゲトゲしている。

孝雄が友人に対してぶっきらぼうに話しているのが新鮮。映画ではモノローグか先生相手の敬語ばかりだったからか。 一応先輩である佐藤に対してもため口。
不良的な理由じゃなくて繊細な理由で学校に行けなかったと思っているが、ここでは言動の端々で荒っぽさを感じる。 そう、孝雄は老けているというか早熟で落ち着いているイメージ。 ここまでの会話や語りだと年相応に見えるのが逆に違和感。

専門学校に協力してもらっているだけあって、靴に詳しくなれそう。靴磨きのこととか。浅草は靴作りが盛んだと初めて知った。 「靴の革は繊維の隙間から呼吸している」はどういうことだろう。 体験入学のシーンもリアリティがある。

先生との初対面で、まず靴に目が行っていたというのはなるほどと思った。 ユキノ先生がお金持ちかもという発想はなかった。研究者という発想も。 確かに研究者だとすれば朝から公園にいれても不思議ではないか。
松本と佐藤が二人きりになりたがらない論の部分が面白い。なるほどな~。 二人きりで話していると、最初は意見のすり合わせをしていても、いつもそうだと疲れるから次第に0か100で反応するようになる。 二人きりの議論はいつでもできるものじゃない、か。

階段のシーンは脳内に『Rain』のイントロが流れてくる。
ユキノ先生からの手紙。研究者になるんだ。 便箋だとしたら相当の量がありそう。手紙っていいな。

新海版は、各人物の「恋」を描いている。視点が章ごとに変わるが、監督自ら書いている分雰囲気は映画に近い。 加納版は、孝雄の視点で進むので、映画の流れに沿いながら新宿御苑の外での描写が増える感じ。素の孝雄がより見える。