西尾維新、2015年、講談社 〈物語〉シリーズ オフシーズン、一作目。 アニメのその後。未知の領域。ファイナルシーズンで物語が綺麗に終わった後、どう続いていくのか。 オフシーズンで1つにまとめようと思っていましたが、まとめるとそこそこ量があったので分けることにします。
そだちフィアスコ
やったぜ、老倉だ。幸せになれ。
正直、阿良々木暦への憎悪は『そだちロスト』で多少和らいだのだと思ってた。 アイデンティティにまでなってるなら難しいな。 冷静さは取り戻せてそうだし、なんだかんだで阿良々木への感情をポジティブに転用できているだけでも良かった。 自尊心とかプライドもちゃんとあるみたいだ。 普通の、コミュニケーションが苦手な子くらいにはなれている。
老倉が阿良々木をぎゃふんと言わせるところ、いつか見たいな~。 地の文が卑屈すぎて悲しくなってくる。
転校先で最初に話しかけた人に無視されるとかきっつぅ。 唐突な「死ね、阿良々木!」には笑った。 自分の語りに対するフォローというか、セルフツッコミも心なしか多い。 何もうまくいかない。 方言が強い。関西かな?
直江津高校には共感できないけど、この普通の高校は身近に感じられる。 教卓の座席表とかあったあった。部活も神原くらいしか言及されてなかったしな。
クズはクズでも瞳島眉美(美少年シリーズ)のような明るさすらない。悲惨さが増している。 会話をしねえ。全部老倉の1人語りに組み込まれている。
おおっ、運命に反逆する老倉育、主人公だ。 クズムーブしてる時の方が生き生きしてないか。 老倉が「地方出身の田舎者」だというのなら、やはり直江津高校は関東とかではなく地方の私立高校なんだろう。 誰も電車で出掛けたりしないからそうかもしれないとは思っていたけど。明確な所在地があるんだろうか。 そして宍倉崎高校は大阪の都市部にあるのかな。
老倉とゲームセンターなんか全然結びつかないな。物陰から突進とか最高にやべえ奴じゃん。「阿良々木派」は熱い。 プリクラ撮りたかっただけかよw
結局孤立。卒業まで過ごせるのか? ええ……そんなオチ……どうしようもねえ。これでオフシーズンの出番終わりだったら怒るよ。
そういえば、老倉は怪異に遭っていない唯一のヒロインか。怪異関係者(暦・羽川・戦場ヶ原・扇ちゃん)に囲まれただけ。 時間が空いて忘れていたけど、幸せそうで幸せになりきれない老倉を見れた『続・終物語』の続刊がこれ。
するがボーンヘッド
そういえば神原にだけ「扇くん」だった。この得体の知れなさを見るのも久しぶりだなあ。 「忍野扇」の正体が分かっても、細かい謎はまだいっぱいある気がしてきた。この思考の誘導は何だ。『花物語』よりもさらに後の話。 いきなり『化物語』的な雰囲気に戻す掛け合い。ちょっと期待したけど、もしやこの話でも阿良々木先輩は出てこないな?
神原遠江と駆け落ちもイメージが結びつかない。 一里塚木の実!?「戯言遣い」にしろサービスが凄いな今回。 この世界に本として戯言シリーズが存在するなら、メタネタでもなくなるのか。エドガー・アラン・ポーを持ち出すのと同じになるから。 羽川の件って何だろう。
「お母さん」!?どういうこと。「昼間に出てくるの」って?自分が忘れているだけで、そんな話があったっけ? 猿の手が成長していたことを今回収されるとは。 そういえば、『続・終物語』がファンサービスだけの話でないとするなら、臥煙遠江の登場が大きかった。
意外とちゃんとした謎解き。「おうぎフォーミュラ」を思い出す。 シリアスな神原は一段と重い。神原だけでもシリーズを続けられそうなスケールになった。
つきひアンドゥ
月火ちゃんのヤバさが増している。人形にサラダ油って。 そらそうだという、斧乃木余接がぼろを出す話。 阿良々木家と千石家ってご近所さんだったのか。 斧乃木余接と千石撫子が接触した。
撫子の成長が感慨深い。 ずっと「可愛い」キャラで止まっていたから。 もう本編では登場しなさそうで、寂しくもある。
おまけ
箱邊夫妻みたいに名前だけ登場する第三者は、このシリーズでは珍しい。ファイヤーシスターズの彼氏くらい?
メインキャラの名前スタート縛りはいつの間に解けたんだろう?一話と二話。 三話は『恋物語』のように語り部がズラしてある。 「後日談と言うか、今回のオチ。」も無い。
今回はいつもより読み応えがあるなと思っていたが、いつもの掛け合いが少ないからだろうか。
次巻: 業物語 - 感想SPACE