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【ネタバレ注意】週刊少年ジャンプを中心に、ふれた作品の感想をたくわえるブログ。

幼年期の終り

(訳)福島正実、1979年、早川書房
〈原作:"Chidhood's End"、A.C.クラーク、1952年〉
あらすじ(結果的には第一部のことだった)を聞いて興味を持ちました。

第一部

始まりはプロローグの5年後? 全知全能がどこまでなのか。秘密主義はなぜ。 「上帝(オーバーロード)」が中二心に刺さる。 “overlord”が単語として存在するみたいけど、英語ネイティブにも同じ感覚はあるのだろうか。

人類にたくさんの益をもたらしてくれたと言われましても、上げてから落とすマキマさんという方を最近見たばかりなので…… 何もしないかと思えば、完璧な英語と演説。攻撃すら無視。太陽光を遮断。 圧倒的格上がなす非暴力はそれはそれで怖いものがあるな。 人々がオーバーロードを「そういうもの」として受け入れるのはそうだろうなという気がする。 普通に会話が成り立つの不気味。 全知と称されるわりにはストルムグレンに問いかけたりする。全能のわりには力に限界がある。勉強による全知か。 「万知万能」くらいがしっくりくる。

ウエインライト以外は感情的な言動がなく、淡々と進んでいく。 ストルムグレンは割とカレルレンに依存しているように見えるけど。 ワクワクし始めたところで「第二の幼年期」というワード。 依存しといて出しに使われたのが許さないって面倒くさいなあ(笑) ビジ・スクリーンが何か分からないけどマジックミラーと同型なんだろう多分。
特に区切りもなく、ページをまたぐと場面が移っていることがたまにあって驚く。

ストルムグレン長生きできたんだ。 最後の独白はどういうこと?ちゃんと読めている気がしない。互いの友情は分かったが、スルトムグレンが結局姿を見た上で黙しているのか、分からん。 「人類の歴史の夜明け前」「全人類の幼年時代」謎で溢れてて良いですね~~

第二部

第二部は姿を見せるその時からか? マジで正体出た!こんなに早いとは思ってなかった。 あれっ、まずイメージした姿は間違っていた。確かにそっちだわ。 分量でいうとまだ序盤にして、オーバーロードの正体が分かり、地球はユートピアが実現してめでたしめでたし。 SF的な未来図。時間軸的には今このときとそう変わらないだろうけど。

パーティーに入ってまた雰囲気が変わってきた。 こっくりさん的なサムシング。 カルレルンが人間の行動に疑問を持つあたりはやはり全知とは違うなと思った。 本当の全知には、人間が無意味な行動を取る理由や愚かな行動を取る理由くらい推測してほしい。

丁寧語を話すオーバーロード草。総督相手とはいえ、ですます調で訳さなくてもよかった気がする。そういうニュアンスがあったのだろうか。
40光年って意外と近いな。 ルシファーとな。

また80年の時間が経つ…?

第三部

第三部は80年後ではなかった。 ジョージ厄介(笑)
「毎日毎日延べ五百時間にもなろうという番組」の部分は、現実が未来予想を遥かに上回ったようだ。YouTubeまで含めたら比じゃない。というか、昔も全世界を考えたらそのくらいはあったのでは? オーバーロードの美的価値観を見極めようとする人が現れるのはなるほどと思った。価値観に優劣はないのだから、ロケット開発のように身を引く理由がない。
オーバーロードは外見に違いがないとか、映像化激ムズ案件。 理想的なコロニーを築いて大人たちが上手くやったとしても、子供世代は生まれた時からそこにいるわけだから選民思想を抱きやすい可能性もあるのか……

幼年期は終わった。 ここでジャンか!浦島太郎状態。 オーバーロードの星まで詳しく描くのは勇気があるな。 最後は博覧会。 ジャンが全く発狂しないのすごすぎる。

全体を通して見ると、新世界を見れずとも特別な職務に没頭していたストルムグレンが一番幸せに思える。あらすじを聞いて期待していた分、読んでいて一番楽しいのも第一部だった。
解説にあったように、SF作品は時間が経つにつれて魅力が減りそう。「50年後」の話すら、素直に未来の話とは思えなくなる。